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How to クロスステッチ 仕上げ編

■仕上げ

刺し終わったら、何もしない方、洗剤で念入りに洗う方、これも様々ですが、私は一度水に通しています。

水に通すと、刺していた間の埃っぽさ(?)が取れて糸の色がくっきりし、くにゃくにゃになった布も、再びしゃっきりするような気がします。ただ、濃色の一部には、水で色落ちするものもあるようです。幸いなことに、私にはその経験はありませんが、水はなるべく冷たい水を使い、あまり長時間水に漬けておかない方が無難です。もちろん、水洗い禁止と書いてあるものは、その指示に従ってください。

水中でヒラヒラさせたら、平らな場所にバスタオルを広げ、挟んで水気を切ります。この時、丸めたりはせず、上から挟んで優しく押さえるようにすると、新たな皺ができたりするのを防ぐことができます。

軽く水気が切れたら、縦横の布目が揃うように形を整えて、場所が許せば、色移りしないボードなどの平らなものの上で広げたまま、そうでなければ、スカートハンガーなどに吊るして干します。大きいものは、なるべく平に広げて干した方が、歪みが出ません。ボーダーなどがあったり、縦横のラインを感じさせるようなデザインの場合は特に、歪むと見苦しいので、十分に形を整えます。

あまりに歪みがひどい場合は、ブロッキングをする必要がありますが、クロスステッチの場合は、そこまで歪むことは少ないと思います。また、歪まないよう、刺す時に気をつけることも大切です。

この後、そのまま放っておかず、途中で乾き具合をチェックします。乾き切ってしまう前、わずかに水分を残す辺りで、裏からアイロンをかけます。水分が残っている方が、頑固な皺も取れ易いのです。アイロンは、目を潰さないよう、しかしある程度はしっかり掛けて、なるべく布が平らになるようにします。

どうしても皺が取れない場合、市販の皺伸ばし剤などを使うと皺が伸びますが、皺伸ばし剤は、洗濯するものに使うという前提がありますので、残った皺伸ばし剤の影響が心配です。それが、後々作品を黄ばませたりする可能性がないとは言えないので、注意が必要です。
私は、この方法はまだ試したことがありませんので、試してみたらまたご報告します。

額装をする場合は、幾つかの下準備をこの工程の前に行った方が、作業の効率が良い場合があります。詳しくは額装の項を参照してください。


■額装

刺し終わって、案外おろそかにされてしまうのが、この額装の作業です。せっかく長い時間と労力を掛けて刺したのですから、最後のちょっとした手間を惜しまず、ゆったりした気分で額装してみましょう!

良い額装とは、どんなものでしょうか。

まず、表面がピンとしていて、皺があったり、でこぼこしたりしていないこと。

次に、バランスがいいこと。真ん中に来るべきものが真ん中に来ていて、余白とのバランスがいいことが大切です。

そして、歪んでいないこと。真っ直ぐなものは真っ直ぐに、平行なものは平行に、直角なものは直角に。これが狂っていると、どうももぞもぞと落ち着かない額装になってしまいます。

何せ、クロスステッチが好きなのに「縦横がよくわかるから」という理由があるくらいで(^_^;)、真っ直ぐな線が曲がっていたり、額に対して斜めになっていると、気になって気になって仕方がありません。

一番簡単なのは、良い額屋さんを見つけることです。ただし、布のことをよく知っていて、扱い慣れているところにします。布のことをよく知らないところに頼んでしまうと、紙と同じように無造作に扱われて、ガッカリすることがあります。もし、布ものを上手に額装してくれるところを見つけたら、少々高くても、お願いする価値はあります。

そういうところが見つからなければ、頑張って自分で額装しましょう。(^_^)

ここでは、台紙の部分で布を折り返し、対応する辺同士を裏側で糸で引っ張って張る方法をご紹介します。この方法は「lacing」と呼ばれていて、これまで他に色々な方法を試しましたが、やっぱりこれが一番という感じがしています。
(「HOW TO PREPARE NEEDLEWORK FOR FRAMING by Ron & Denise Chan」という本に詳しく解説されているのですが、その本を出していたオーストラリアの通販会社が倒産してしまったので、今では入手困難でしょうね、残念。)

よく話題になるのは、ガラスを入れるか入れないか、ですね。
本などを見ると、汚れなどを防ぐために、ガラスは入れた方が良いと書いてあることもあります。実際、入れたガラスの表面は、結構汚れますので、作品を汚れから守る効果はありそうです。

私の場合は、ガラスは入れません
これは、ほとんど主義のようなもので、「ニードルワークにはガラスは入れない(ものである)」と習ったからなんです。(^_^;)
ガラスを入れない方が、表面のテクスチャーがよくわかりますし、ガラスに何か映り込んで見にくいということもありません。額の枠部分が出っ張っているので、作品自体は埃がすることもなく、飾る場所にもよるでしょうが、あまり汚れるという感じはしません。ウールなどで刺した場合は、湿気でガラスが曇ると言って嫌う人もいます。(ウールは、「呼吸」するのだそうです。)

ということで、ガラスを入れるか入れないかは、飾る場所やお好みによって、でいいと思いますが、ガラスを入れる場合は、間にマットを入れて、ガラスと作品の間に空間を作ると良いようです。

次にマウントする台紙ですが、額に付いているダンボールにマウントしていませんか?

台紙は、白い無酸性のもので、あまりペラペラしていないしっかりしたものを使います。酸性のものは、長い年月の間に作品を黄ばませたり、シミの元になったりするそうです。色は、白であれば、作品の色にほとんど影響を与えません。

具体的には何がいいかというと、マットに使うボードというのは、無酸性なんだそうで、ほどよい厚みもあり、台紙にピッタリです。額屋さんで、一応無酸性かどうか確認した上で、額に合わせて切ってもらうとよいでしょう。この時、縁がボサボサしないようにスパッと、あまり余裕を持たせないで切ってもらうようにします。リネンなら2ミリ、AIDAなら3ミリ程度の余裕があれば十分です。

なお、台紙には、糊の付いたタイプのものもあります。糊で固定できて、貼ったりはがしたりもできるので、これを使うのも簡単です。ただし、AIDAで全面刺しした時以外は、あまりお勧めしません

というのは、刺し上がった布は、刺した部分は裏に厚みができて、どうしても刺していない部分が浮く形になります。ですから、均一にペタッと貼り付けるのは意外に難しく、一度上手く貼り付けても、湿気の多い時期などに布が伸びると、ところどころ浮いてでこぼこになってしまうのです。全面刺しであれば、裏全面に厚みがあることになりますから、こういうことはなくなりますし、仮に多少浮いたとしても、それほど目立ちません。
このタイプの台紙を使う時は、「Acid free(無酸性)」と表示されているものにしましょう。

額と台紙が用意できたら、作品のどの範囲を見えるようにするか決めます

四辺にボーダーなどがある場合は簡単で、ボーダーと枠(またはカットしたマットの窓)との余白が均等になるようにすればよいのですが、意外に難しいのが、そうした基準のないデザインの場合です。

よく、図案の中心が中心に来るように、と言われますが、中心ではなく、重心を考えなくてはいけません
例えば、下のようなデザインの場合、どちらが収まり良く見えるでしょうか。

図1 図2
図1 図2

図1は、デザインの端から均等に余白を取ったもの、図2は、作品を右にずらし、右より左の方が余白が大きくなっています。お好みにもよるかとは思いますが、何となく図2の方が収まり良く見えませんか?

このように、デザインによっては、むしろ余白が均等でない方が気持ちがいい場合もあるのです。作品の「重心」(私が勝手にそう呼んでいるのですが)は、中心とは違いますので、実際に仮に枠に入れてみて、納得の行くまでとことん眺めましょう。

額装の範囲が決まったら、四辺にしつけ糸で印を付けます。よく、「中心を合わせて」という言い方をされますが、中心だけ合わせて真っ直ぐにするのは、とても難しいです。四辺の縦横を予めはっきりさせておいた方が、作業が簡単です。

特にリネンの場合は縦横がわかりにくいので、きちんと布目を拾って印を付けておきます。AIDAも面倒がらずに付けておくと、後でラクです。また、印をつけた線と布の端まで(裏へ折り返す部分)の長さが、各辺で著しく異なった場合、揃えて切っておくと、ストレスになりません。その場合、改めて縁をかがったりジグザグを掛けたりして、始末しておきます。

四辺に印を付けたら、各辺の中心にも合印を付けます。余分な糸端は、後でからまったりしますので、短く切っておきます。

さて、ここで一段落。ここまでを、上の「仕上げ」の前にやった方が効率がいいこともありますので、何度もアイロンを掛けるのがイヤな方は、作業の順番を考えてみてください。

いよいよ布を台紙にマウントします。

まず、台紙の裏側に各辺の中心がわかるよう、印を付けます。あまり縁ギリギリに付けると、当然ながら折り返した布で見えなくなってしまいますので、それを考慮します。裏と言えども余計な線が見えたりするのはイヤ、という方は、後で消せるよう鉛筆等で印すとよいでしょう。

印付けが終わり、歪みなく平らに仕上げられた布の、印の角の部分を、台紙の厚み分を控えて裏側に向けて45度に折り、しっかりアイロンを掛けておきます。私の場合、本当に布の扱いが苦手で、アイロンを掛けたりする時もバイアス方向にすぐ伸びてしまったりして、四苦八苦しますが、ここでしっかり折っておくと、後が楽です。

角を折ったところ
折る時は、角ピッタリでなく、台紙の厚み分、やや外側で折ります

しっかり折り目を付けたら一度開き、作品を下向きにおいて、印を目安に台紙を置きます。まず角を合わせ、次に、短い辺の布の中心の合印と台紙の合印を合わせ、同様に長い辺も中心を合わせて、固定します。同様に、中心から端に向けて、四辺を仮止めして行きます。この段階では、あまりギュウギュウ引っ張る必要はありません。付けた印の線が歪まないように注意します。

固定するために、一度、貼ったりはがしたりができるメンディングテープを使ったのですが、テープが糸にくっ付いたりして、少々厄介でした。普通のピンでは、台紙が固くて刺さりません。仕方なく、ピンを台紙の厚みの部分に刺して固定しました。あまり乱暴に刺すと、紙の層が剥がれてしまうので、注意します。画鋲で普通に上から刺すと簡単ですが、その場合は、サビに注意します。

ピンで固定したところ
ピンで固定したところ

仮止めが終わったら、短い辺の中央から(糸が長くなる方から)端にむけて、反対側の辺との間に糸をジグザグに渡して張って行きます。
あまり布端に針をいれるとほどけてしまうので、2センチ程度入ったところに針を入れるようにします。糸は、何でもよいと思いますが、私は、キルティング用の糸を使っています。ここでも、あまりピンピンに張ってしまう必要はありません。長い糸が必要なので、足りなくなったら、途中で新しい糸に繋ぎます。繋ぎ目はなるべく中央に来るようにしておかないと、後で引っ張って糸がずれた時に、布で引っ掛かることになって困ります。針目の間隔は、あまり細かすぎない方がよいのですが、2センチ以上にならない程度にします。
端まで行ったら、15センチ程度残して糸を切り、仮止めしておきます。

同様に反対側の端まで糸で張り、長い方の辺も張ります。角は、45度に折っておいたので、額縁のようになりますね。残しておいた糸は、角を綴じるのに使いますので、各角に残すようにします。具体的には、左上に残したら、もう片方は右下に残す等、左・右、上・下が重ならないように残します。例えば、横方向を張る時に左上と左下に残してしまったら、縦を張る時に右上と右下に残すことはできません。

仮張りしたところ
仮に張ったところ。見えませんが、糸は各角に残してあります

ここまで終わったら、ピンを抜き、各辺の中央から端に向けて、少しずつ糸を引っ張り、皺や歪みがないように張って行きます。あまり張り過ぎず、印を付けた線が歪まないように注意しながら、途中で表に返して確認しつつ、張るようにします。ボーダーなどはっきりしたラインがある場合は特に、線が歪まないように、余白が均等になるように、十分気をつけましょう。端の方は、布が伸びますので、糸を引きすぎないようにします。あくまで、まっすぐに皺がなく平らになっているか、に重点を置きます。

とは言え、この作業は、ものすごーく気を使わなければいけない、というほど微妙なものではありません。ゆったりした気分で、ゆっくりやってみてください。

表から見て満足の行く状態になったら、残してあった糸で角の斜めの線を綴じます。印付けのしつけ糸をそっと抜いて、大事に額に入れたら、遂に完成です!

lacing完了
lacingが完了しました

さて、この方法は、裏もキレイに仕上がるのですが、根気のない私がやると角がきっちり合わなくてイライラしたり、どうしても端の方の引きが弱くなったりするので、最近は、角を額縁にせず、単純に折るだけにしています。

額縁の場合と同じように、布につけた印を元にピンで仮止めし、短い辺の中央から(糸が長くなる方から)端まで張り、次に、長い方の辺も同様に張って行きます。後で折る方の辺は、角が広がりがちになりますので、広がらないように注意して折ります。
その他の注意点は、額縁の場合と同じです。

刺し上がった作品は、額に入れず、タペストリーなどに仕立てる場合もありますね。
私の場合、本当に布の扱いが苦手で、ちっとも上手にできません。何で布は伸びて形が変わるのよ! とか、プリントの布なんか縦横がわからん! とか、いつもぶつぶつ文句を言っています。(^_^;) 洋裁の得意な方が羨ましい・・・。

いつの日かコツを会得した時には、またUPしたいと思いますが、こちらはちょっと無理そうです。


■まとめ

大変長くなってしまいました。読んでくださって、ありがとうございます。

最後に簡単にまとめると、

均一に形の揃った×を、平らに、しかしふっくらと刺すように工夫しましょう。
綺麗に刺すためには道具も大切、枠は使う、糸は八等分にして収納するのがおすすめ。
布は、縁を始末し、畳み皺があれば、市販の皺伸ばし剤を使ってでも取っておくか、その部分は避けましょう。

刺す時は、
テンションを一定に保つ

糸をねじらない(ほぼ絶対に糸がねじれずに刺せる刺し方もありますが、それを全部やっていると「楽して」に反するので(^_^;)、ここには載せませんでした)

そして、

布の穴を塞がないことを意識して、刺す順番をよく考える

ことが大切です。

特に、刺す順番をよく考えることは重要だと思います。これをすることによって、刺しやすさ、効率、美しさなどが向上することと思いますので、普段意識せずに刺していらっしゃる方は、一度やってみてください。

刺し上がったら、最後まで丁寧に仕上げることも大切です。
額装や仕立て次第で、本当にステキなものになります。
せっかく長い時間と労力を掛けた大事な作品なのですから、是非手を掛けて仕上げてあげてください!


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